『ジャパンブルー』でストール染め 浮世絵で見る深い『藍』

静岡市葵区紺屋町で染色教室「Art&Craft YUTORI」を主宰する稲垣有里さんと、歌川広重作品を中心に約1,400点収蔵。浮世絵文化の発信をしている「静岡市東海道広重美術館」の学芸員・山口拓海さんによるプログラムが、「静岡市東海道広重美術館」の会議室で開催されました。

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前半は、稲垣さんによるストール染めのプログラム。
参加者全員、藍染めは未体験とのこと。
「草木などの自然素材を使った染物はとても手間がかかります。
煮出して、媒染液で色を定着させて、そしてまた煮出して…。
求める色合いを出すまで、何度もこの作業を繰り返します。
今回は、その工程を簡略化させたものを体験いただきます」。

「藍染め」に使用する「藍」は、世界に4種類ほどあるそう。
日本には、タテ科やマメ科の藍があるそうですが、今回は、マメ科の植物から抽出した染料の状態になった「インディゴ」を使用して、ストール染めを体験しました。

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染めに使用する布地は、麻とレーヨンで織られたもので、浜松の職人さんが作っているもの。
その職人さんが引退されたらもう手に入らないという希少なものだそうです。
「染色前の素材は少しゴワゴワしていますが、柔軟剤を使用すると柔らかくなりますよ」とのこと。
実際に、見本のストールを広げてみたり、巻いてみたりして、デザインを考えていきます。

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通常、染物をする時は、瓶などを使用するとのことですが、今回は、簡単にビニール袋を使用した染め方にチャレンジ。
染めたくない部分を、ビニールテープや輪ゴムで結ぶことで、模様を作ることができます。
布を斜めに折ったり、蛇腹に折ったり…。
一人ひとり、稲垣さんがデザインの相談にのり、模様の出し方をアドバイスしてくださいました。
どんな仕上がりになるのかは、染めてみてのお楽しみに。
みなさん、ワクワクしている様子が伝わってきました。

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染料の粉をお湯で溶かし、炭酸ソーダとハイドロといった薬品を投入。
酸化還元反応を利用し、染めていくのだそう。
少し臭気があるため、会場内は薬剤の臭いに包まれます。
染料を極力空気に触れさせないことが重要だそうです。

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出来上がった薬剤の色は、濃い緑色。空気に触れると、藍色になるというから不思議です。
染料が入ったビニール袋に、布地を入れていきます。

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5分程度揉み込み、布地を袋から出すと、みるみる緑色から藍色に変わっていきました。
模様出しに留めておいたビニールテープや輪ゴムを外すと、完成!
各々、仕上がりにとても満足そうで、笑顔に溢れていました。

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「アイロンをかけて仕上げてもいいですし、くしゅくしゅの状態も風合いがあります。
お好みに合わせて仕上げてくださいね」。
今回は、会議室でのプログラムのため、水場が用意できず、洗いの作業は各自自宅でとのこと。
みなさんがどんなふうにストールを使うのか、興味深いですね。

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後半のプログラムは、「静岡市東海道広重美術館」の学芸員・山口さんによる浮世絵講座。

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浮世絵で使用されている青には、露草、藍、プルシアンブルー(通称ベロ藍)の3種類があり、露草と藍は植物由来のもの、プルシアンブルーは化学由来のものだそう。
広重の作品『(滝に松上インコ)』や『(鉄線花と小鳥)』は、藍が使用されており、天然染料ならではの淡い色合いが見事です。

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歌川広重は、プルシアンブルーをよく使用し、海外ではこの色を「広重ブルー」と称するほど。
『東海道五拾三次之内 沼津 黄昏図』などにも使用されています。
植物由来の色は、劣化が否めませんが、このプルシアンブルーは化学由来なので、江戸時代に描かれた作品でも、今でも色鮮やかに青が残っているようです。

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浮世絵における「青」についてのお話をうかがった後は、普段は、ガラスケースの中に収められている広重作品を間近に観させていただきました。
江戸時代に描かれた作品を、こんなに近くで観ることができるのはこのプログラムならでは。

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他にも、復刻版版画も手で触れて観ることができました。
裏までしっかり色が映るのは、プルシアンブルーならではだそう。
「浮世絵は、当時300〜500円程度、高いものでも1000円程度で、庶民に親しまれた絵画です。
当時の広告が、絵に描かれていることもあり、隅々までよく観てみると、時代背景がわかってより楽しめると思います」。

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普段はなかなか知ることがない浮世絵の楽しみを、間近に堪能できる貴重な機会になりました。

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